どうも、パパです。自己紹介はこちら。本日のテーマは「来年の日銀新総裁就任後、住宅ローン金利はどうなる?」です。日銀の黒田総裁が来年4月に退任しますが、その後の金利がどうなるかについてお話ししたいと思います。本日のゲストは、住宅ローン比較サービス「もげチェック」を運営している株式会社MFS取締役COO、塩沢さんです。
塩沢さん、こんにちは。私の自己紹介はこちらで、外リアにも出演させていただいております。主に住宅ローン金利について情報発信しております。
ありがとうございます。モルガン・スタンレー出身で、しかもボストン・コンサルティング・グループでも活躍されていた住宅ローン金利のプロとお話ができるのは非常に楽しみです。住宅ローンと聞くと、なんだ投資の話じゃないのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本日の内容は日本経済や銀行の経営戦略など、投資につながる話もたくさんありますので、ぜひ最後までご覧ください。ちなみに、塩沢さんのことはなんとお呼びしましょう?「もげチェック塩沢さん」で良いですか?
はい、ありがとうございます。まあ、そのうち「もげ塩さん」になっちゃいそうですが、とりあえずその名前でお願い致します。
さて、本日のテーマにもありますが、来年の日銀総裁は誰になると思いますか?
いきなりド直球の質問ですね。私は雨宮総裁だと思います。次の日銀総裁のミッションは金融緩和解除への布石になります。黒田さんと一緒にマイナス金利を導入した人が、その戻し方を一番よくわかっていると思うので、雨宮さんが次期総裁になるのかなと考えています。
なるほど。確かに次の総裁のミッションから考えると、そういった人選も成り立ちそうですね。金利政策は株価にも影響を与えるので、次の総裁が誰になるのか今後ますます注目です。
さて、本日は日銀の金融政策や銀行の金利戦略を踏まえ、住宅ローンの金利が今後どうなるかを一緒に考えたいと思います。もげチェック塩沢さん、まずはじめに足元の住宅ローン金利について教えてください。
はい、お任せください。グラフが過去5年間の住宅ローン金利の推移です。緑が全期間固定、青が10年固定ですが、2月以降金利が上昇しており、現在は高止まりしている状況です。一方、変動金利は緩やかに低下傾向です。紫がメガバンク、オレンジがネット銀行ですね。固定は上昇、変動は下落という逆の動きになっています。
逆の動きになっていますね。これは面白い動きです。
いや、そうなんですよ。その結果、変動と固定の金利差が過去最大級に拡大しています。トランプ大統領時代に米中貿易摩擦がありましたが、その際に米国で利下げが行われて変動と固定の金利差は0.63%まで接近しました。現在は米国の利上げに伴い、それに連動する形で固定金利が上昇しているため、1.05%まで差が拡大しています。元本3500万円だと年間返済額は20万円の差になります。いわば金利上昇をヘッジするための保険料ですね。年間20万円、35年だと700万円ですね。
個人的にはちょっと保険料としては高いなと思いますが、どう思われます?
いやー、私も同じ意見ですね。700万円払ってでも回避しないといけない金利上昇リスクが本当にあるのかを考えると、割に合わない数字だと思います。
実際にユーザーはどの金利タイプを選択しているのですか?
こちらの円グラフはもげチェックユーザーの分析結果です。変動の人気は相変わらずで、半数のユーザーが変動金利で借りることを希望しています。一方で約4割のユーザーが変動と固定どちらが良いのか分からないと答えています。安い変動金利で借りたいけれど金利上昇も気になるし、かといって固定金利は高いし、と悩むユーザーが多いんだと思います。
確かに金融知識がないとそこで思考が止まってしまいますよね。気持ちはよく分かります。話が脱線するのですが、そもそもなぜ「もげチェック」という名前なんですか?
これをですね、「モゲージ」という英語からとっています。それをチェックするという意味合いですね。
なるほど、だから「もげチェック」。はい、住宅ローンを選ぶならもげチェックです。ありがとうございます。語呂が印象に残りますよね。
さて話を戻しますが、変動金利はいつ頃上がるのか、それについてはどう考えていきましょうか。
因数分解をして考えれば結論が出ると思います。出ました、モルガン・スタンレー流やBCG流の問題解決スキルです。めっちゃ期待値あげてきます!
ベース用で承知しました。まず結論から申し上げますと、変動金利が上がるのは2035年以降と考えています。ですので固定か変動かを悩んでいる方は変動金利でいいと思います。
2035年、これは大胆な予測ですね。
はい、自信を持っています。ただ変動金利が決まる仕組みを考えればある程度予測できると思います。先ほどお伝えした因数分解とは、日銀のマイナス金利政策と民間銀行の変動金利の基準金利設定、この2つに分けて考えることを意味しています。この2つが金利を決める重要な要素ですので。
ではまず、マイナス金利が今後どうなるのかについてお伝えします。私の見立てでは当面マイナス金利は解除されないと考えています。それには2つ理由があります。一つ目が、そもそも私たちは金利が上がりづらい時代に来ているということです。
金利が上がりづらい時代ですか?
そうなんですよ。日本の経済成長率は年々鈍化しています。日本は少子高齢化のため人口がどんどん減っており、2050年に1億人を割り込み、高齢化率も4割になるという試算結果があります。人口減少は需要の減少となりますので、今後も経済成長が低下傾向が続くでしょう。そうなると政府が目指す経済成長率と実際の成長率にギャップが発生してしまいます。そのギャップを埋めるには金融緩和のレバーを引き続けるしかありません。日本のような人口が減少している成熟国では金利を上げづらいという構造的な問題があるのです。
たしかにそれはあるかもしれませんね。1960年代のような高度経済成長時代ではそもそもないですね。
次の理由が賃金上昇の見通しが当面立たないということなんです。日銀は金融緩和解除の要件として持続的な2%のインフレ達成を挙げています。この2%インフレというのは賃金上昇、需要増大、インフレという良い経済のサイクルが回っている状態です。要は賃金が上がると商品が多く売れますので、物の取り合いになって物価が上がり、その分賃金がまた上がるというサイクルに入れるかどうかが大事なんです。
だんだんと話の筋が見えてきましたね。ポイントは賃金ですね。
そうなんです。OECDの分析によると日本は過去30年間賃金が上がっていません。大きな理由として考えられるのは、日本は雇用維持にお金を使う国だということです。雇用維持には労働者保護というメリットがある一方で、企業が簡単には従業員を解雇できないため賃金を上げづらいデメリットがあります。この国は雇用の流動性が乏しいという根本的な課題を抱えていますから、賃金上昇は相当大きな環境変化がない限り難しいと考えています。ですのでマイナス金利を解除できる条件は相当ハードルが高く、一朝一夕に解決されるものではないんですよね。ですので来年に日銀総裁が交代してもマイナス金利が解除されることはないと考えています。
となるとマイナス金利はいつ解除されますか?永遠に解除されないとか?
いやー、さすがにそれはないと思いますが、私の予測では2030年以降です。
理由は何ですか?
バブル世代の退職ですね。
それ関係ありますか?
大アリですね。このグラフは年代別の就労者数の分布なのですが、バブル世代の層が非常に多いのです。この世代が退職すると労働力が逼迫するため労働者の奪い合いになるはずです。しかも今の若手やミドル層は転職をいとわない世代です。労働力を確保するために企業が賃金を上げなければならないと考え始めると思います。バブル世代以上が中心の雇用が前提だったので、経営陣には一度入社した人はそれほど賃金を上げなくてもずっと会社にいてくれるという安心感があったと思いますが、世代交代によって安心感が緊張感に変わり、結果として賃金の引き上げにつながるのではないかと考えています。
なるほど、そういうストーリーですね。バブル世代がキーカードになるなんて、胸がキュンキュンしちゃいますね。
パパぞうさん、ひょっとしてバブル世代ですかね?
あ、もうそれだけは秘密でお願いしまーす。ばれちゃいましたね。あとでこっそり教えてください。
ですのでまとめはこの2点ですね。賃金上昇はバブル世代退職後が鍵になる。マイナス金利解除はその後、2030年以降。
続いて民間の銀行の動きについて話しましょうか?
そうですね。仮にマイナス金利が解除されたとしても、変動金利が上がるまでには時間がかかるというお話をしたいと思います。住宅ローンの変動金利は民間銀行が設定する基準金利が元になっています。このスライドのように基準金利から引き下げ幅を引いたものが実行金利、実際に借りれる金利となります。引き下げ幅は完済するまで一定ですので、基準金利が下がれば変動金利も下がりますし、基準金利が上がれば変動金利も上がります。つまり、変動金利が上がるかどうかは基準金利次第と思います。またこの基準金利ですが、短期プライムレートに1%加えて計算されます。このグラフはその短プラと市場金利であるライボーの推移をグラフにしたものです。緑の市場金利が下がっているのですが、青は途中からそれに連動せず、過去30年ぐらい一定水準を保っている状態です。
なるほど、もし市場金利が上がり始めたら基準金利はどう連動するのですか?
仮にマイナス金利政策が解除されて市場金利が上がり始めると、すぐに市場金利が上昇した後に初めて基準金利も上がるものと考えられます。実際、2006年に日銀が利上げをした時期があったのですが、市場金利が0%から0.5%程度に上昇した後、ようやく基準金利が上がり始めました。ですのでマイナス金利政策が解除されたとしても、基準金利が上がり始めるまではタイムラグがありますので、すぐには変動金利が上がることはないと考えています。
タイムラグの視点は面白いですね。短期金利は今-0.1%ですから、基準金利が上がり始めるまでには0.6%のバッファがあるということですね。他にもすぐに金利が上がらない理由はありますか?
銀行間の競争激化が挙げられます。こちらは地銀、メガバンク、ネット銀行の変動金利の推移ですが、最近は三つ巴の戦いになっています。こうなるとお互いが激しく牽制し合うのですぐには金利を上げられない状態になってしまうんですよね。
激しい戦いですね。なぜこんなに競争が激しくなっているのですか?
預貸率の低下が挙げられます。このグラフが都銀の預貸率の推移です。集めた預金のうち何パーセントを融資に回せているかを示すものです。この10年ずっと下がり続けています。つまり預金を集めても貸し出し先を見つけられないというジレンマが浮かび上がってきます。そうなると多少金利を削ってでも貸し出そうというプレッシャーがかかりますので、住宅ローン金利の低下が止まらないのだと思います。
ありがとうございます。預貸率の話も出てくるとは、まさに銀行経営のエッセンスですね。マイナス金利の解除は当面先、マイナス金利解除後に変動金利が上がるのもタイムラグがあるとなると、実際に変動金利が上がり始めるのはいつになりますかね?
2035年以降だと思います。このスライドにある通り、変動金利上昇までは5ステップがあるのですが、まだ1ステップ目ですからね。10年以上は上がらないでしょう。
ありがとうございます。そうなると次の日銀総裁も大変でしょうね。
いやー、そうだと思います。人口減少による経済成長率の低下、雇用維持が強く意識される社会、こういった一朝一夕には解決できない課題に取り組まないといけませんので、金利の復活は相当気の長い話だと思います。
戻りますね。それを踏まえると金利タイプはもちろん変動金利です。こちらのグラフは住宅ローンの利息の支払いを表したものですが、実は最初の10年で35年間の利息総額の半分を支払うんですよね。となると返済初期にわざわざ高い固定金利を選ぶ必要はないと思います。元利均等払いだと最初の期間は利息負担が大きい時期ですので、足元にそういう計算になりますね。
そうですね。続いてこの表は変動金利と固定金利の総返済額シミュレーションの結果です。仮に変動金利が11年目に0.5%から2%に上がったとしても、最初から固定金利を借りているケースよりも総返済額が少なくなってすごいです。2%の変動金利は相当な金利上昇だと思いますが、それでも安いということは覚えておいてください。
これは説得力ありますね。
ありがとうございます。ですのでよくある煽り記事、これには本当にご注意ください。焦って固定金利にすると逆に無駄に高い金利を払うことになりますので。
こういうのはよく見かけますよね。ふわぁを煽るだけ煽って。私個人もこういう根拠のない情報発信はあまり好きじゃないですね。
ちなみに変動だとどのローンがいいですか?
はい、まさにそのためのサービスがもげチェックです。もげチェックには「もげレコ」という無料サービスがありまして、情報を入力していただくと最適な金融機関をご提案します。また、相談機能がありますので、ローンアドバイザーに金利タイプの選択、団信の比較などもご相談いただけます。
便利ですね。実際どれくらいのユーザーが利用していますか?
月に4000名ほどの