今回のテーマは「暴落局面で確認したいこと参戦」です。2020年のコロナショック以降、米国株は非常に好調でした。こちらは2020年2月から2021年末までのVTIのチャートです。VTIは米国市場全体に投資するETFですね。2020年3月の底から昨年末まで、綺麗な右肩上がりのチャートとなっています。しかし、2022年に入ると相場の状況は一変。米国企業の株価は軒並み右肩下がりとなります。こちらは全米3800社に投資するETF VTIと、アメリカの新興企業100社に投資するETF QQQの年初来の株価チャートです。どちらの指数も年初から急落していることが分かります。
米国相場低迷の要因として挙げられるのは、利上げ、リセッション懸念、中国のコロナ再拡大、サプライチェーン問題などさまざまです。またウクライナ情勢により世界情勢も不安定、資源価格高騰によりインフレも加速しています。このような米国市場が下り坂となっている状況に直面し、「このまま米国株投資を続けて大丈夫か?」と不安を覚える人は少なくないでしょう。特に最近投資を始めたばかりの方はなおさら心配していることでしょう。
しかし、私は全く心配していません。これまでの動画でもお話ししたように、長期で見たら米国株成長のストーリーは変わらないからです。これまで米国株市場は数々の暴落を経験しても、何十年にもわたって右肩上がりに成長してきました。こちらはS&P 500の過去60年の株価チャートです。何度も暴落しながらも長期的には上昇し続けてきたことがわかります。
とはいっても、実際に暴落局面や調整局面に身を置くと、多くの投資家さんは「このまま株価は下がり続けるんじゃないか?」、「さらに大きな暴落が来るんじゃないか?」と心配してしまうのは無理もありません。そんな時に覚えておきたいのは、株式投資をする際の大事な心得と、暴落局面で確認したいことです。本日のブログではこれらを詳しく解説していきます。
まずは、株式投資に臨む際の大事な3か条を紹介します。
Contentsマーケットでは想定外のことが必ず起こることを肝に銘じる
株式投資には想定外のリスクがつきものです。しかし、好調な相場が続くと多くの方がこのことを忘れてしまいます。通常、好調な相場では「このままずっと続く」という幻想を抱きがちです。2012年末から10年近く米国市場は大変好調でした。2020年3月のコロナショックを挟んだものの、米国株はずっと右肩上がりでした。
しかし、2020年のコロナショック後、大規模な金融緩和により市場は急回復、日本でもFIREブームが巻き起こるなど、米国株投資が注目を浴びました。FIREとは経済的に自立し早期退職を目指す生き方です。多くの人が「米国株投資ならそれができる」と意気揚々と投資に参入しました。しかし、2022年に入ると相場の状況は一変し、多くの人が意気消沈しているかもしれません。
株式投資において最も避けるべきことは、将来はこうなるはずだと決めつけてしまうことです。確証バイアスという言葉があります。これは、自分の信念を支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視する傾向のことです。ビジネス、SNS、政治、科学など実生活の様々なシーンで散見されますが、株式投資にもこの確証バイアスが働きます。
株式投資は余剰資金で行う
次に重要なのは、株式投資は余剰資金で行うことです。目先の利益に目がくらんで生活に必要な資金まで投資するのは非常に危険です。投資には常にリスクが伴います。もし株価が急落して資産が減ってしまったら、生活が立ち行かなくなる可能性があります。
生活防衛資金という言葉をご存知でしょうか?これは、万が一に備えてためておく資金のことです。長い人生において、病気やケガで入院する、会社が倒産する、親が急に倒れて介護のために仕事を辞めざるを得なくなる、など予測できないことが起こる可能性があります。そのために貯めておくのが生活防衛資金です。
生活防衛資金に必要な金額の目安は、生活費の3ヶ月から1年分と言われています。独身一人暮らしの場合、総務省の家計調査報告によると単身世帯の1ヶ月の消費支出平均は約15万円です。したがって、45万円から90万円程度が一人暮らしの場合の目安となります。夫婦の場合は2人世帯以上の消費支出平均が約28万円ですので、85万円から170万円程度が目安となります。
株式投資をする際は、このような生活防衛資金を確保した上で余剰資金を投資にあてることが重要です。投資は余剰資金で行うからこそ冷静な判断ができるのです。
短期で資産を倍増させようと思うことをやめる
株式投資で10兆円以上の財を築いた投資の神様、ウォーレン・バフェットの名言があります。バフェット氏がAmazonの創業者ジェフ・ベゾス氏から「何であなたの投資戦略をみんな真似しないのですか?」と尋ねられ、「ゆっくりお金持ちになりたい人はいないよ」と答えたというエピソードがあります。
株式投資では短期間で莫大な利益を上げるトレーダーや個人投資家の話がよくメディアで取り上げられます。しかし、そのような短期で成功する人で、成功が長続きする人はほとんどいません。人は長期の利益よりも目先の利益を優先する傾向があり、お金持ちになりたいという欲がギャンブル的な投機に人を駆り立て、やがて失敗を招きます。
一方、バフェット氏は徹底的に調べて選んだ優良銘柄のみに長期投資する戦略を取っています。特にバフェット氏は複利の力を最重視しています。長期投資は複利の力を最大限生かすために効果的です。例えば、100万円の元本を年5%で運用しても1年で105万円にしかなりませんが、10年では163万円、30年で449万円、50年で1147万円に増えます。
短期で資産を倍増させようと暴落時に資金を一気に入れ逆張り投資を狙う、レバレッジ商品につぎ込み一攫千金を狙うなどの投資手法は当たれば大きいですが、非常にリスクが伴います。給料なインデックスファンドや個別銘柄を長期で運用することがリターンを得やすいことが知られています。
米国株投資が優れている理由
次に、暴落局面で確認したいこととして「米国株投資が優れている理由」を振り返ります。米国株投資をしている皆さんはなぜ米国株投資を選んだのでしょうか?以下のような理由が考えられます。
- 米国は過去の長い期間にわたって株価が右肩上がり
- 米国は世界最大の経済大国
- 米国は人口増加が期待できる数少ない先進国
- 米国では次から次にイノベーションが生まれ、成長企業が多い
これらの理由が多くの人が米国株投資を行う理由だと思います。株価が暴落している時は、米国株投資の優位性を思い出し、なぜ自分は数ある国から米国株投資を選択したのか振り返ってみると良いでしょう。
自身の投資信を確認する
次に確認したいのは、自身の投資信です。当たり前ですが、人によって投資方法は異なります。例えば、グロース株投資、バリュー株投資、高配当株投資などがあります。
- グロース株投資:成長力の高い比較的若い企業に投資して大きなリターンを狙う
- バリュー株投資:実際の企業の実績と市場の評価の乖離を見つけて割安株を買い、その後の値上がり益を狙う
- 高配当株投資:企業が株主に出す配当金を得ることを目的とし、できるだけ還元率が高い企業に投資する
さらに、インデックスファンドに投資するか個別銘柄に投資するかによっても投資スタイルは変わります。インデックスファンドは分散投資が利点で低リスク低リターンが期待できますが、個別銘柄は高リスク高リターンが期待できます。
暴落局面では自身が決めた投資信がぶれやすくなります。例えば、グロースETFに投資していたが、暴落で資産減少が不安になり高配当株投資に切り替えた。しかし、市場が回復すると再びグロース株に戻る、というような方針の転換を繰り返すと資産形成のスピードは鈍くなる可能性があります。自分が投資する目的を明確にし、方針を途中で変えないことが重要です。
相場サイクルを押さえておく
暴落局面で確認したいことの三つ目は「相場サイクル」です。ランダムに動くように見える株式相場ですが、実際には4つの相場サイクルが存在します。
- 金融相場
- 業績相場
- 逆金融相場
- 逆業績相場
それぞれのサイクルの特徴を理解しておくことで、今の相場がどのサイクルにあるのかを知ることができ、大きなトレンドに乗ることや下落リスクを回避する可能性が高まります。
2020年はまさに金融相場でした。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国の中央銀行は大規模な金融緩和を行い、アメリカではFRBが政策金利をゼロ金利にまで引き下げました。また、過去に例のない量的緩和や財政政策を実施しました。その結果、市場にお金が増え、企業は借り入れをしやすくなり、利払い負担が軽くなり、企業業績回復を背景に株価が急上昇しました。
続いて2021年は業績相場でした。業績相場の特徴として、新興企業への投資が盛んになり、新規上場(IPO)も人気となり初値が高くなる傾向があります。2021年は大型テク企業だけでなく、新興ハイテク企業や業績が出ていないIPO仕立てのハイパーグロース株もどんどん買われました。
しかし、業績相場の後に来るのは逆金融相場です。景気が良くなると中央銀行は加熱しないように引き締めに転じます。FRBなどの中央銀行の役割は物価安定です。世界的な資源価格の高騰、コロナ後の経済活動再開、サプライチェーン問題など様々な要因が重なり、インフレが急加速しています。
逆金融相場の次は逆業績相場です。金融引き締めにより景気や企業業績の先行きが悪化し、それが株価下落につながります。経済やマーケットに逆風が吹く環境でも、優良なインデックスや企業に投資し続けることが大事です。
関連する質問と回答
Q1: 米国株投資を続けるべきかどうか心配です。アドバイスをください。
米国株投資は長期的に見て成長が期待できる市場です。過去のデータを見ると、米国株は数々の暴落を経験しながらも右肩上がりに成長してきました。短期的な暴落に動揺せず、長期的な視点で投資を続けることが重要です。また、生活防衛資金を確保し、余剰資金で投資を行うことで、冷静な判断ができるようになります。
Q2: 株式投資のリスク管理について教えてください。
株式投資のリスク管理には、以下のポイントが重要です:
1. 生活防衛資金を確保する。
2. 分散投資を行う。
3. 長期的な視点で投資を行う。
4. 確証バイアスに陥らないようにする。
5. 投資先の企業や市場の状況を常にチェックする。
Q3: 投資信を貫くことの重要性について教えてください。
暴落局面では投資信が揺らぐことがありますが、一貫した投資信を持つことが重要です。短期間で投資方針を変えると、資産形成のスピードが遅くなる可能性があります。自分が投資する目的を明確にし、長期的な視点で投資信を貫くことが大切です。
Q4: 相場サイクルを理解することのメリットは何ですか?
相場サイクルを理解することで、今の相場がどのサイクルにあるのかを知ることができ、大きなトレンドに乗ることや下落リスクを回避する可能性が高まります。金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場の特徴を理解しておくことで、適切な投資判断ができるようになります。
Q5: 短期投資と長期投資の違いは何ですか?
短期投資は短期間で利益を上げることを目指す投資方法で、高リスク高リターンが特徴です。一方、長期投資は長期間にわたって資産を増やすことを目指す投資方法で、複利の力を生かしてリターンを得やすいことが知られています。短期的な利益を追い求めるのではなく、長期的な視点で投資を行うことが重要です。